バナナの植物学
バナナの名称・原産地
学名:Musa spp.
英名:Banana
和名:バナナ(バショウ科)
原産地 : 東南アジアの熱帯地域
バナナの種類
世界中で栽培されているバナナの種類は、大きく「生食用(Table Banana)」と「料理用(Plantain)」に分かれ、300種類以上あるといわれています。
生食用バナナ
キャベンディッシュ
(Cavendish)
日本で最もポピュラーなバナナ。
スーパーや果物店で一般に売られている。
セニョリータ
(モンキーバナナ)
(Senorita)
通称モンキーバナナと呼ばれる小型のバナナ。
皮が薄く、甘い。
モラード
(Morado)
皮が赤紫〜赤茶色で厚い。あっさりした
甘味でやや酸味がある。
ラツンダン
(Latundan)
小〜中型でやや太短いバナナ。皮が薄い。とても甘みが強く、やや酸味がある。ラカタンと並びフィリピンの生食用バナナとしてポピュラー。
料理用バナナ煮たり、焼いたりして食べるバナナです
ツンドク
(Tindok)
超大型で長さ40cm以上のものもある。
ホーンバナナとも呼ばれ、牛の角に似ている。
カルダバ
(Cardava)
太短く、角ばっている。フィリピンで最も多い料理用バナナ。
リンキッド
(Lingkit)
果指がくっつき、房が扇形。
バナナの分布
バナナの生産地は熱帯、亜熱帯地域に分布し、バナナベルト[1]地帯と呼ばれる、赤道をはさんで南緯30°から北緯30°の間で栽培されています。
現在日本で食べられているバナナは約8割がフィリピン産で、エクアドル、台湾からも輸入されています。
バナナの形態
仮茎
バナナは大きくてまるで木のように見えますが、実際は高さ2~10メートルの多年生の草です。
木のようにみえる部分は仮茎(または偽茎)と呼ばれ、やわらかい葉が重なりあっています。
花
畑へ植付けてから半年ほど経つと、苞(ほう)で覆われたふくらみがあらわれ、しだいに垂れ下がり、赤紫色の巨大な筆先のようになります。花はこの苞(ほう)に包まれています。赤紫色の苞(ほう)は別名バナナハートと呼ばれ、生産地の人々は野菜として利用します。
花は苞につつまれている
果実
苞(ほう)が1枚ずつ外側にめくれると、二列に並んだ小さなバナナの実とその先端の白い花が顔を出します。つぎつぎと苞がめくれて実があらわれ、1本の木(茎)に約10〜15房のバナナが成ります。また、バナナの実は最初下の方を向いていますが、おもしろいことに太陽の光に向かってだんだん上に曲がって成長していきます。
- 苞がめくれてバナナの小さな実と花が顔を出す
- バナナの実は最初下を向いている
- 太陽に向かって反り返るバナナの実
- 成長したバナナ
バナナの種の話
種ありバナナ
現在、私たちが食べているバナナに種はありません。しかし、バナナを輪切りにしてよく見ると、中心部に小さな黒い点があります。
実はこれがバナナの種のなごりで、まだ野生のものだった大昔には立派に存在していました。
しかも、その種は堅く、アズキ粒ほどの大きさで、ぎっしり詰まっていました。
現在でもフィリピンやマレーシアあたりでは野生の「種ありバナナ」が残っていて、現地の人は食べているということです。
どうしてバナナの種はなくなったの?
もともと種があったバナナに種がなくなったのは、"偶然"によるものでした。
バナナの遺伝子に突然変異が起こり、偶然の産物として種のないバナナが生まれたのです。しかし、人間にとって種なしバナナは食べる部分が多く、たいへん都合がよかったので、大事に育てられました。このようなことから種なしバナナが定着していったと考えられています。
種なしバナナについて詳しく説明をしましょう。
遺伝子の突然変異によりできた種なしバナナは、染色体の数が、種ありバナナとは異なっています。種ありバナナの染色体の数が2本ずつ対になっている二倍体であるのに対し、種なしバナナは染色体の数が3本ずつになっている三倍体です。一般に、三倍体の植物というのは、染色体の細胞分裂が不規則になるため、種が出来にくいという性質をもっています。このようにバナナの種の有無は、染色体の数の違いによるものなのです。
種なしバナナはどうやって増えるの?
種のないバナナは、茎の根っこの脇からニョキニョキ出てくる新芽を利用して次世代のバナナを育てます。(写真)
まず新芽の中から、よい芽だけを選びだして苗を育て、ある程度大きくなったところで大きな畑に植えかえます。さらに生育させ、十分に大きくなったところで果実を収穫します。
このように、種なしバナナは種がなくても、発芽した芽を株分けすることで子孫を作っていくことができるのです。
注釈
- ^ [1] 赤道をはさんで南北緯度30度までに分布するバナナの生産地域をいう。熱帯から亜熱帯の高温多湿の地域が多い。